求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
11 全てのみ込んで迎える夜
「どうして……」

やはり遥人は日奈子の行動を把握していないようだ。

彼は明らかに動揺しており、言葉を探すように視線をさまよわせている。

彼女のことを結衣に知らせたくなかったのかもしれない。ただそれは僅かな時間で、覚悟を決めたような目で結衣を見つめた。

「彼女は結衣に何を言ったんだ?」

「才賀君の婚約者だったけど事故が原因で別れを告げられたって……以前話していた、付き合っていた女性は彼女なんだよね?」

遥人は小さな溜息を吐いた。

「ああ」

「や、やっぱりそうだよね……でも婚約者とは聞いてなかったから、驚いたよ」

声が震えた。分かっていたことでも遥人の口から聞くと改めて痛みを感じた。

「ごめん。婚約者とはっきり言わなかったのは卑怯だった。ショックを受けた結衣が俺から離れて行くかもしれないと恐れたんだ。ただ話した内容に嘘はないから」

「うん、彼女の話も才賀君が言ってたことと同じだった。そのうえで私に身を引いてほしいって」

日奈子が来たと聞いた時点で予想していた内容なのか、遥人は驚きはしなかったが酷く不快そうに顔をしかめた。

「本当にごめん。まさか彼女がそこまでするとは予想出来なかった」

遥人の声から苛立ちが伝わってくる。それは日奈子へのものだと分かっているけれど、結衣は戸惑いを覚えた。
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