求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

「本当に予想出来なかったの? 彼女の気持ちは知っているんでしょう?」

察しの良い彼の考え方とは思えない。

「彼女の家とはしっかり話をつけていたし、まさか結衣の存在を調べて近づいて来るなんて……迷惑をかけて本当にごめん。俺の考えが甘かった」

遥人はそう言いながら頭を下げる。真摯な態度だ。だけどそうじゃなくてと、結衣は焦燥感に苛
まれた。

(才賀君は、日奈子さんの気持ちを分かってないの?)

わざわざ会社まで訪ねて来て、別れるように言うのは並大抵の気持ちではない。

何をしても遥人を取り戻したいという強い願いによるもののはずだ。

それ程想われているのに気付かないなんてことがあるのだろうか。

(それとも知っているのに気付かないふりをしている?)

だとしたらやはり遥人は日奈子に対する想いが少しもないということになる。

そこまで考えてふと気がついた。

遥人と日奈子の交際は、記憶がない期間に始まったのだと。
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