求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「……え?」
日奈子は信じられないとでも言うように、口をぱくぱくとする。
「記憶を取り戻した。だから君の嘘はもう通じない」
「そ、そんな……だって全然思い出せないって言ってたのに……」
たしかにその通りだ。遥人の記憶は未だ閉ざされたまま。けれど日奈子に真実を言わせるには、これしか方法はない。
遥人は余裕の笑みすら浮かべて告げた。
「いつどんなきっかけで思い出すのか分からない。そう医者に言われたのを知っているだろう?」
日奈子は血の気のない真っ白な顔で頷く。
「わ、私は……」
「なぜ、こんな嘘を? 俺が記憶を取り戻したら直ぐにばれる危ういものだと考えなかったのか?」
「だから……だから早く結婚したかったの! そうすれば思い出しても別れられないでしょう?」
日奈子がやたらと結婚に執着していたのはその為なのか。なんと浅はかなと遥人は日奈子に侮蔑の目を向ける。
「こんなことをした理由は?」
「理由?」
「連城グループの地位と資産狙いか? 北桜家の君にはそんな欲を持つ必要はないと思うが」
「ち、違うわ!」
日奈子は心外だと声を高くする。