求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「ではなぜ?」
言い逃れ出来ないように鋭く睨む。日奈子の目に涙の膜が張った。
「だって遥人さんと結婚したかったのだもの。別れたあとも忘れられなくて……あの事故日にどうしても会って話したいことがあるって無理やり呼び出したでしょう? それはもう一度やり直して欲しいって言う為だったの」
日奈子の言葉に、遥人は眉を顰めた。
「理解出来ないな。婚約解消は君も同意していた」
「それは……別れたいって言ってる人に縋るなんてプライドが許さなかったから平気なふりをしたの。でも後から後悔して、どうしても何をしても取り戻したくなった」
日奈子はソファーから立ち上がり、遥人の元にかけよる。
それから涙で潤んだ目で遥人を見下ろした。
「遥人さん、私と結婚して欲しいの。嘘を言ったのは謝るわ。でも好きな気持ちは本当なの。もう意地を張らないし、プライドも捨てるから。だから……」
「無理だ。俺は君を許せない」
必死な日奈子の告白を遥人は躊躇いもなく拒絶した。
「な、なんで……謝ってるのに」
「悪質な嘘が謝罪ひとつで許されると思ってるのか? 今回のことで俺の大切な人が酷く傷ついている」
「大切な人って、水島結衣のこと?」
日奈子がかっとしたように声を荒げる。