求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

結衣は遥人の電話に直ぐに出た。異変を感じると心配そうに声をかけて。居ても立っても居られない様子が伝わって来た。


――きっと“あの日”もずっと遥人を待っていたのだろう。遥人の心を疑いながら、それでも信じて不安に苛まれながら。


「ごめん……」

『え? なにが?』

「待たせてごめん」

『才賀君?……なんか様子が変だよ、やっぱり何か有ったんじゃ』

「思い出したんだ……あの日も早く結衣に連絡をしようと思っていた俺は……」



まるで映画を見るように浮かぶ光景。

あの日……婚約解消したことで問題が発生した。電話では話せないので、会って相談したい。直ぐに済むからとそれまででは考えられない強引さで、日奈子に懇願された。

日奈子がそこまで言うなら余程のことだろうと、結衣を迎えに行く前に話を聞きに行った。
その後結衣を迎えに行くつもりで、時間を連絡しようとして、一時停車出来る場所を探していた。

そんな中、突然飛び出して来た対向車。甲高いブレーキ音に悲鳴。一瞬のことで直ぐに衝撃に襲われ、意識が途絶えた。

結衣を待たせているのに……けれど目覚めたとき、彼女の存在は自分の中から消えていたのだ。


『えっ! うそ……本当に?』

結衣の声が震えている。

『全部? 私とのことも?』

「ああ、全部だ。結衣、今から会いに行ってもいいか?」

『うん! あ、でも私が才賀君を迎えに行く。待ってられないの』

結衣の急く様子が目に浮かぶ。早く会いたい。会って抱きしめたい。


遥人は急ぎ、結衣との待ち合わせ場所に向かい歩きだした。

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