求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
足と手が一緒に出てしまうくらいドキドキしていた。けれど初詣の間遥人がリラックスさせてくれたおかげで、彼の実家に到着した頃には多少ましになっていた。そして。
「は、はじめまして。水島結衣と申します。本日はお招きいただきありがとうございます!」
緊張しながら、がばりと頭を下げた結衣に、三つの声がかかった。
まずは遥人の父、連城グループの会長。
「結衣さんだね。いらっしゃい。よく来てくれたね。遥人に話は聞いているよ」
続いて彼の母。五十代後半だと聞いていたが、十歳以上若く見えるとても美しい人だったが、口を開けば気さくな人だった。
「まあ、素敵な方じゃない」
遥人の兄は、彼より真面目で神経質な雰囲気だった。それでも結衣に対しては笑顔を浮かべてくれた。
「いつも弟がお世話になっています」
心配していたよりもずっと好意的に遥人の家族に出迎えられた結衣は、拍子抜けして玄関に立ち尽くした。
「さあ、遠慮しないで上がってね」
遥人の母に手を引かれ、リビングに向かう。
都心とは思えないほどの敷地面積に立つ日本家屋。会社の会議室かと思う程広いリビング。
さすが連城グループ会長の家だ。
「結衣さん、今回の件についてだいたいのことを遥人から聞いています。心労をかけてしまって本当にごめんなさいね」
口数の少ない遥人の父と兄の代わりに、母が心底申し訳なさそうに言う。
「お気遣いありがとうございます。事情を説明して頂いたので今はもう大丈夫です」
「それならよかった。遥人に聞いているかもしれないけど、北桜さんの件は私たちの方でしっかり対応するから。結衣さんは何も心配しないでね」
「はい。ありがとうございます」
彼の家族が温かい人たちでよかった。
食事の途中には笑顔を浮かべられるようになっていた。