求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

「失礼いたします」

「白川課長、ご多忙中申し訳ありません。そちらはお話のあった水島さんですか?」

出迎えたのは結衣の見知らぬ女性だった。整った顔立ちでダークグレーのスーツがよく似合っていた。年齢は四十歳前後に見える。

「はい。水島、こちらは本社の秘書室長だ」

白川が結衣を振り返りながら告げた。

グループ本社の役職者が出て来たことに動揺しながら結衣は頭を下げた。

「水島結衣です。建築デザイン部でアシスタント業務を担当しています」

秘書室長は結衣を値踏みするように素早く視線を動かしてから笑顔を浮かべた。

「この度は遥人さんの復帰に協力して頂き感謝しています」

「いえ、同僚ですし当然のことです」

遥人がどうしているのか気になった。

入室した際応接セットのソファーに座っているのは分かったが、すぐに秘書室長が立ちふさがったので、まともに見ていない。

「白川さんから聞いているとは思いますが、遥人さんの記憶の問題についてはここだけの話にしてください」

「はい」

「ではオフィスに行く前に打合せをさせてください。こちらに」

秘書室長に促され白川と共にソファーに腰を下ろす。そのとき初めて遥人の姿を目にした。
< 44 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop