求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
早速会議室を出て行こうとすると、「水島さん!」と遥人に呼び止められた。
その場で振り向いた結衣に、遥人が近づいて来て、少し距離を置いて立ち止まった。
彼の立ち位置は以前よりも少し遠い。その事実に少しだけ傷つく。
だけどと、無理矢理気持ちを切り替える。
(いちいち落ち込んでる場合じゃない。こんなことはこれからいくらだって有るんだから)
意識して笑顔を作り、彼を見つめた。
「どうしたの?」
「ちゃんとお礼を言ってなかったから」
「え?」
「協力してくれてありがとう。本当に感謝している」
遥人の真摯な目はその気持ちが本心だと物語っている。彼のこういう誠実なところが好きだと思う。
「早く本格的に復帰出来るように私もフォロー頑張るから。困ったことが有ったら遠慮なく相談してね。力になるから」
だからどうか苦しまないで。言葉にそんな気持ちを込める。
遥人は目を瞠った。
「才賀君?」
なぜ驚いているのだろう。
(私、変なこと言った?)
「いや、少し驚いて。水島さんがこんなに親身になってくれるとは思ってなかったから」
「とうして? 同部署で同期なのに」
「そうだけど、あまり話す機会も無かったし、水島さんがこんなに面倒見の良い人だと知らなかったんだ」
遥人が戸惑う理由にショックを受けた。今の遥人にとって結衣は親しみを感じない、よく知らない相手なのだと言われたようなものだから。
(半年前の才賀君にとって、私はそんなに遠い存在なの?)