求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

記憶を失っていても遥人は優秀だった。

結衣が持って来た資料をすごいスピードで確認していく。

ときどきはっとしたような表情を浮かべて一度読んだ資料を再確認したりと、自分の中で納得するまで読み込んでいる様子が伺えた。

その間、結衣が付きっきりでいる必要はないので、何か有ったら呼んで貰うことにして自席に踊り通常業務に取り掛かった。

遥人のフォロー係になったから業務量を考慮して貰えるなんてことはなく、負担は増えている。

効率化を図ったり残業を増やして対応しているが、まどかが心配してときどき手伝いを申し出てくれる。

「結衣、私今日は余裕あるから手伝うよ」

「ありがとう。それじゃあサンプル依頼お願いしていい?」

「了解」

直ぐにふたりの情報共有スレッドに必要なデータを添付する。まどかは即確認したようで、途端にトーンダウンした声が聞こえて来る。

「依頼者、瀬口梓……やけに大量だね。本当にこんなに必要なの?」

「多分……新ホテルの案件だから慎重になってるんじゃないかな」

遥人がメインで動いていた横浜のホテルのプロジェクトは、結局そのまま任せられる者がいない為白川が引き継いだ。ただ課長職の白川は他の業務も多く抱えている為、補佐として瀬口梓が任命された。

彼女はそれまでもキャパオーバーのように見えたのに更に仕事が増えて大丈夫なのかと心配だったが、なんとかこなしている。ただサンプル依頼もデータ収集も遥人のときと比べ増えたので結衣の負担は大きい。

でもそれも遥人が復帰するまでの期間限定のことだ。
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