求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「そういう文句を水島さんに言うのは見当違いだと思いますけど。水島さんも白川課長からの指示で動いているんだから」

まどかは梓相手でも臆せずにはっきりものを言う。それで喧嘩になることはさすがにないが、険悪な雰囲気には成る訳で、今も梓は不快そうに眉根を寄せた。

「分かりました。白川課長に確認します」

梓はそう言うと踵を返し自席に戻る。途中振り返り結衣にきつい目を向けた。

「サンプルの手配、今度は遅れないでくださいね」

「今度は?」

サンプル依頼はこれまで期日に遅れたことなんてないのだけれど。結衣が戸惑っている間に梓は立ち去ってしまう。

「なに、あの態度」

まどかの棘のある声が耳に届く。

「まどか……聞こえちゃうよ」

「いいよ。結衣も、もっとはっきり言ってやりなよ」

まどかは席に座り直しイライラとキーボードを叩く。

「サンプル最速で頼んだから」

「ありがとう」

不満を言いながらも仕事はしっかりやってくれるから頼りになる。

問題は梓だった。

(相当ストレスが溜まっているみたいだった)

遥人が直ぐに復帰しないことを不満に感じているようだったし、何か仕出かさないか心配だ。

< 54 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop