求婚蜜夜～エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい～
「そうか……ありがとう」

遥人は穏やかに微笑む。だけどその笑みがどこか不自然だった。

「才賀君、本当に大丈夫？」

「なにが？　体調なら問題にないけど。医者からもOKを貰ってる」

「そうだよね……ごめん、何でもない」

違和感を覚えながらも上手く言葉に出来なかった。

その後、遥人からの質問に答えているうちに就業時間になった。

「才賀君、今日はここまでにしよう」

「ああ。白川課長は戻らなかったな」

「会議が伸びているみたいだね」

「資料にあった再開発エリアでの問題？」

遥人がノートパソコンのカバーをパタンと閉じながら呟く。

「うん。そうだと思うよ」

結衣は頷きながらも内心驚いていた。

遥人は記憶がない間の状況の確認について、過去の分から取り掛かっていたはずだ。

再開発エリアのトラブルはつい最近のことなのに、もうそこまで目を通していたとは。

「白川課長に負担がかかってるな。フォローしたくても今の俺じゃ足手まといだかな」

「でも、今日の様子を見てたら、そんなに時間をかけずに元のポジションに戻れそうだと思ったよ。あまり焦らずに頑張ろう」

「そうだな……ありがとう水島さん」

遥人は納得していないようだったけれど、その気持ちを表に出す気はないようだった。

結衣にフォローの礼を言うと、振り返らずに会議室を出て行った。

< 56 / 256 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop