求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
遥人が帰ったあと、午後八時まで残業をした為、心身ともに疲れ果てていた。
基本的には自炊を心がけているけれど、とてもそんな体力は残っていないくて、自宅の最寄り駅近くのスーパーで総菜を買い一人暮らしのマンションに帰った。
最近は帰宅して直ぐにシャワーを浴びている。後でにすると睡魔が襲って来て億劫になってしまうのだ。
メイクと汗を落としてすっきりしてからテレビの前に置いた小さなソファーに座る。
総菜と一緒に買ったレモンサワーをごくごくと飲む。一息つくと溜息が漏れた。
「……結構きついよね」
遥人に協力することで仕事量が増えるのは構わない。ただ彼が結衣に向ける視線が辛いのだ。
他人行儀だし結衣の言動に明らかに戸惑っている。多分彼からすると距離が近すぎると感じているのだろう。
結衣が親身になるのが意外だと言っていたくらいだし。
不安は的中した。
今の遥人は結衣に対して恋愛感情を持っていない。それどころか同僚としても大して親しさを感じていない。
半年前と言えば、結衣と遥人が親密になった横浜ホテルの案件がスタートした時期。
彼の中で全てリセットされているのだ。
この状況を何と言えばいいのか。
「破局?……失恋?」
声に出してみると更に落ち込んだ。
始まったばかりの恋はあっと言う間に終わってしまった。
お互いを深く知る時間すらなく突然に。