求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
(才賀君は何を言おうとしていたんだろう)

聞くのが怖いと思ったくせに、気になって仕方ない。

休憩を終えてオフィスに戻っても、モヤモヤした気持ちは晴れず、慣れているはずの資料集めに苦戦するありさま。

視線は無意識に遥人の席に向いてしまう。

彼の言葉は何だったのかと悩んでいるけれど、実はある程度予想もしている。

状況から、結衣に好意を持っていると伝えようとしてくれたのではないかと思う。

だけど遥人の口からはっきり聞かないと、自信が持てない。

もし、勘違いだったら……浮かれていて落とされたら、きっと酷く落胆してしまうだろう。

つまり、結衣は遥人が好きなのだ。

自分は彼とつり合いが取れていない、同期としての友情はあるが、特別親しいわけじゃない。そんな理由を付けて気持ちに蓋をしていたけれど、出会った頃は、異性として意識していた。

ただ無理だと、とっくに諦めていた。

それなのに、ほんの少し生まれた期待で、封印していた恋が顔を出す。

出会った頃よりも大きくて深い想いが。

彼との友情を育むのと同時に、恋心も育ってしまっていたようだ。

(才賀君と話したい)

怖いけど、知りたい。はっきりさせたい。

仕事が終わったら勇気を出して声をかけてみようか。

結衣は恋愛面で不器用だと思う。スマートな行動も駆け引きも出来ない。度胸もない。

あれこれ考え過ぎるあまり、行動する機会を逃すタイプだ。だから年齢の割に恋愛経験が乏しく自信がない。
だけど、彼との関係は、このまま無かった事になんてしたくない。

もし幸せな答えではなかったとして落ち込んでしまったら……どうするかはその時考える。

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