求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

そして今日、やっと待望の職場復帰を果たした。

復帰に際し、記憶の件は同僚には隠しておくことになった。
家族の意見が大きいが遥人自身も「記憶喪失です」なんて公表して、変に同情されるのは不本意だから。

ただやはり半年分の仕事を忘れている以上、誰かの助けが必要で、信頼出来る上司の白川にだけ事情を打ち明け協力を頼んだ。

白川は快く引き受けてくれたが、一人では難しいと遥人の同期の水島結衣をフォロー役に引き入れた。彼女が適任だと言い切って。

どうして彼女を?と彼の決定に疑問を感じた。

水島結衣は遥人の同期だが、特に親しい訳じゃない。むしろ同期の中では一番距離のある相手ともいえる。

と言うのも、遥人の所属する建築デザイン部内では建築士とアシスタントの間に微妙な壁があるからだ。

お互い立場上の不満がある為、和気藹々といった雰囲気ではない。それは遥人と結衣が配属された時からで、そんな状況で同期だからと仲良く会話をするのは憚られた。

結衣の方からも遥人に必要以上に近付くことはない。それが建築デザイン部内では普通だった。

そんな関係はいつか変えたいと思っていた。

良い仕事をするためにも皆で協力した方がいいに決まっているのだから。

ただ先輩たちをに意見をして改善をしていくのは難しかったし、仕事が忙しく余裕が無く実現できずにいた。

未だ溝のある間柄なのに余計な仕事を増やされたのだから、結衣は迷惑に思っているだろう。
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