求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
家でも仕事が出来るようにと社会人になったときに買った大きな机の引き出しには、綺麗に包装された小さな箱が仕舞ってある。

全く見覚えのないそれは、旅行バッグに入っていたものだ。

箱の中身はシンプルなデザインだけれど質の良いダイヤのネックレス。
女性への贈り物。それも本気の相手へのものなのは明らかだった。

アクセサリーを贈りたいと思うほど日奈子に恋していたと言うのか。

違和感しかない。しかし退院後見舞いに来た日奈子は遥人と結婚するつもりだと言い切った。
事故の日も、今後について話をするために会う約束をしていたのだと。

日奈子に記憶がないと事情を説明したが、結婚を止める気はないと言うし、両家の家族も賛成している。

過去の自分が日奈子にプロポーズをしているのなら、忘れたから付き合いを止めるだなんて無責任なことは出来ない。

ただどうしても納得が出来ない。

(日奈子の何を好きになったのだろう)

会う度にそんな疑問が浮かぶ。ダイヤのネックレスも日奈子のイメージに合わないと感じる。

(本当に俺がこれを選んだのか?)

違和感ばかりで、どうしても贈る気にはなれず、引き出しの奥に仕舞ったままにしていた。
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