求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
五時三十分の定時を過ぎた頃、遥人が打合せから戻って来た。

会議室に長く籠った長時間の打合せだったけれど、顔に疲れは出ていないようだ。

(大丈夫)

結衣は遥人の周りから人がいなくなると、意を決して近づいた。

「才賀君」

意気込むあまり上擦った声が出てしまったせいか、遥人は少し驚いた様子を見せた。

「どうした?」

「あの……今日時間有るかな? 昼間の話、途中で終わっちゃったから」

結衣にとってかなり勇気のいる発言だった。

こういうのはタイミングも有るだろう。彼の気持ちが乗らなくて断られたら?

不安だったけれど、そんな気持ちが吹きとぶ程柔らかな笑顔を向けられた。

「俺も話したいと思ってた。直ぐに仕事片付けるから一時間だけ待って貰える?」

「うん……」

ほっとして自席に戻り、残りの仕事をする。結衣の仕事は三十分程で終わったので、先に上がり簡単にメイク直しをしてからオフィスビルを出た。

九月の二週目とはいえ、まだ暑さが残っている。
なるべく汗をかかないように、ゆっくりと待ち合わせ場所に向かう。

会社の人たちと鉢合わせないようにと考えたのか、少し離れた場所にあるレストランの為、地下鉄で移動した。

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