求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
翌日の午後にいつもの会議室で、セミナーの資料を遥人に返した。

彼は昨日同様、気まずそうにしながら受け取った。

「ありがとう。手間かけてごめん」

「手間じゃないよ。それに本来はこういう資料を貰う方が良く無かったんだし」

「でも、俺が強引に渡したんじゃない?」

「え?」

一瞬、どきりとした。

(もしかして、思い出したの?)

遥人は結衣の表情を見て、苦笑いを浮かべた。

「その顔を見ると当たってるな」

「……当たってる? 思い出したんじゃなくて?」

「覚えてる訳じゃないけど、水島さんは同僚に何かをねだったりする性格じゃないと思うから」

遥人は察しをパラパラと捲る。途中まで目を通し「やっぱり見覚えないな」と呟く。

(なんだ……思い出したんじゃなかったんだ……)

結衣は落胆する気持ちを押さえられなかった。

(私、ちょっとしたことで、一喜一憂しすぎだよね)

もう少し落ち着かなくては。気持ちを整理していると、遥人が怪訝そうにする。
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