求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

完全無視。梓にとって結衣は、というよりアシスタントは取るに足らない存在のようだ。

遥人に彼女の苦労を聞いて同情していたけれど、さすがに不快感がこみ上げてくる。

(いくら忙しいからって、周囲への気遣いが無さすぎる)

そのまま自席に戻る気になれず、フロアを出て一階のコーヒーショップに向かう。

残業中遥人とよく訪れた店だ。

午後三時前後は休憩を取る社員が多いためか店内は混み合っていたが、だいたいの社員はテイクアウトをする。

結衣もカフェラテをテイクアウトでオーダーした。

遥人の分も買おうか少し迷ったけれど、梓との打ち合わせが長引くかもしれないので、やめておいた。


(才賀君は瀬口さんを負担に感じないのかな)

以前は唯一の女性建築士として気負う梓に気を配っていた。

でも先ほどの彼女は遥人に対しても棘のある口調だった。あんな風にまくし立てられたら自分だったら疲れて嫌になると思うけど。

あまり考えたことが無かったが、遥人は梓をどう思っているのだろう。

同僚としてではなくひとりの女性として、どんな風に見ているのか。

横浜のホテルの案件が始まる前。
結衣と遥人は業務が重なる機会がなかったため、個人的にも関わりが無かった。

結衣の方は何かと目立つ遥人の存在を意識していたけれど、向こうはそうでもないはず。

遥人にとって部内で一番親しい女性は、梓だったのだろう。
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