求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
その頃の気持ちに戻っている今の遥人は梓に親しみを覚え、それで親身になっているのだとしたら……。
(……嫌だな)
そんな風に思う資格はないと分かっているのに、重い気分になる。
これは嫉妬だ。
遥人が自分意外の女性と親しくするのが苦しい。しかもそれが納得できない相手だからなおさら憂鬱になる。
だけど自覚したところで耐えるしかない。
もし恋人同士だったら、気持ちを伝えられたのかもしれないけど。
(同じフロアなのがきつい……何でも見えてしまうんだもの)
視界に入れば気にしないでいられないから。
あまりゆっくりもしていられない為、しぶしぶ建築デザイン部のフロアに戻る。
嫉妬は片思いでもするものだ。結衣も学生時代に何度か経験している。
好きな人が側にいることで感じるの胸のときめき。仲良く出来れば嬉しくて、他の女の子と親しくしているところを目にすれば焼きもちを焼いた。
嬉しさも苦しさもあった。
でも、今回の場合は状況が違う。
遥人は忘れてしまっているけど、「結衣を好きだ」と言ってくれたのだ。
結衣はその事実をどうしても忘れられない。だから欲張りになっている。
仕事中、仲良く会話を出来るくらいでは物足りない。
もう一度特別な目で見て欲しい。彼に近付きたい。
諦めなくてはいけないのに、欲と僅かな期待がなかなか捨てられなかった。