求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

「瀬口さんって才賀さんに甘えすぎだよね」

「え?」

視線を隣に向けると、まどかはうんざりしたように梓を見ていた。

「私たちに対する態度と全然違うし、感じが悪い」

「……態度違うように見える?」

いつもは愚痴を止める役の結衣が、違う反応をしたからか、まどかはおや?というように眉を上げた。

「見えるよね。あの子才賀さんを狙ってるんじゃない?」

まどかはさらりと肯定する。他にも何か言いたそうにしていたが内線電話が鳴ったので表情を引き締め素早く対応する。

「建築デザイン部です……お疲れさまです。白川課長でしたら外出していますが……」

まどかのはきはきとした声を聞きながらも、結衣はますます気分が悪くなるのを実感していた。

(瀬口さんが才賀君を狙ってる? そんなことって……)

遥人が梓を好きになったとしたら……考えるのも怖くなる。

圧倒的に多くの時間を遥人と当然のように過ごせる梓。今の結衣に勝ち目はない。

(私、前はどうやって才賀君に好きになって貰ったんだろう)

条件は現在とほとんど変わりないのに、何がきっかけで近づけたのか。

本当に謎だ。見当もつかず打つ手がない。

報われない想いがきつくて、いつも気分が晴れない。悩み寝つきが悪くなり疲労が取れない毎日は苦痛だった。


だけど今日は特別だ。

久々の同期会が開催され遥人も出席する予定だからだ。梓がいないところで遥人と話す機会が持てる。

就業のベルが鳴るのが待ち遠しい。久しぶりに楽しい時間を過ごせそうだ。

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