求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
レストラン【グランデ】は、店名のイメージとは違いこじんまりとした店構えだ。

遥人が予約していた個室は、店の入り口からかなり奥に位置していた。

六畳くらいの部屋の窓からは、手入れの行き届いた中庭が見える。奥行のあるつくりのようだ。


遥人が来る前に飲み物くらい頼んでおいた方がいいかとメニューを確認する。

イタリア料理が基本で、そのほか創作料理がちらほらある。普段なら興味が湧くラインナップ。

けれど、これから遥人と話す内容を考えると緊張して食欲が湧かない。

なかなかオーダー出来ずにいると、予想よりも早く遥人がやって来た。

彼は結衣と目が合うと優し気に微笑む。

「ごめん、結構待たせた?」

「私もほんの少し前に来たところだよ」

遥人はよかったと言いながら、スーツの上着を脱ぎ、結衣の正面の椅子に腰を下ろす。

「何か頼んだ?」

「まだ。選べなくて」

「それなら俺のおススメにする? 結衣が食べられないのは、セロリだけだよな」

結衣は少し驚きながら、お願いしますとメニューを差し出した。

(私がセロリ食べられないって知ってるんだ)

そんな情報どこで得たのだろう。会社で話題にしたことが有っただろうか。

遥人はウエイターが来ると、スマートな態度でオーダーする。

メニューに視線を落とすその表情も、迷いなく話す自信に溢れた声も、結衣の心をかき乱した。

(なんか……昨日までよりかっこよく見える)

たった一日で人が変るわけもない。全て結衣の気持ちの持ちようなのだけれど、一度意識するとコントロール出来なくなる。

(今からこんなで、ちゃんと話せるのかな?)

まずはランチの時の話の続きを聞きたい。だけど何て切り出せばいいのだろう。
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