求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「俺は水島さんを同僚以上の気持ちで見ていたんだと思う」

はっきりと断言され、結衣はごくりと息を呑んだ。

思いがけない展開にドクドクと鼓動が乱れる。

(どうしよう……なにを言えばいいの?)

遥人は何も思い出していない。それなのに状況から真実を突き止めてしまうなんて。

その通りだと答えれば、もう一度やり直せるのだろうか。

期待に気持ちが高揚しかける。だけど直ぐに現実に気付く。

(戻れるはずがない。今、才賀君の心は私にないのだから)

そんな事実はないと言うべきだ。そう口を開きかけたとき遥人が切羽詰まったような声を出した。

「水島さん、頼むから本当のことを教えてくれ」

「で、でも、余計に混乱するだけだと思う」

「混乱しても真実が知りたい。自分だけが何も知らない状況は辛いんだ」

遥人は苦しそうに眉根を寄せる。その様子に結衣ははっとした。

(才賀君は、割り切ってるわけじゃない)

精力的に仕事に取り組んでいるからもう前を向いているのだと思っていた。けれどそれは気持ちを隠していたから。

(言わない方がいいなんて私の勝手な思い込みだったんだ)

そう気付いた結衣は躊躇いながらも、彼の願いに応える決心をした。
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