求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
自然な会話の仕方を忘れてしまったように、言葉が出て来ない。
そうこうしている内にドリンクが運ばれて来た。
遥人も結衣も軽いアルコール。乾杯をして口に含むと予想以上に喉が渇いていたのだと気が付いた。
「美味しい、一気に飲んじゃいそう」
遥人は嬉しそうにこげ茶の瞳を細める。
「結衣の好きな味だと思ったんだ」
「……私の好み知ってるの? さっきもセロリが嫌いだって分かってたけど」
「まあね、自然と覚えた。結衣のことは結構知ってる」
鼓動が跳ねた。彼に特別だと言われているように感じたから。
「す、すごいね。さすが才賀君、記憶力がいいよ」
「そうでもない。結衣は特別」
「え……」
結衣は小さく息を呑んだ。遥人の眼差しが真剣になったのだ。
「さっきは最後まで言えなかったけど、結衣が好きだよ。気の合う同期としてではなく、ひとりの女性として」
「……!」
心臓がドクドクと苦しいくらい鳴っている。
彼からの言葉を期待していたくせに、実際言われると舞い上がってどうしようもなくなる。
二十七にもなって、顔を赤くして言葉に詰まっているなんて、情けない。
(早く言わなくちゃ。ありがとう、私も才賀君が好きだから嬉しいですって)
未だ落ち着かない胸を押さえ口を開く。
「あ、あの……ありがとう、好きです!」
(あ……最悪)
やけに大きな声が出てしまった。そのうえ台詞がカタコト。
遥人はスマートにそれでいて誠実に堂々と気持ちを伝えてくれたと言うのに。
自己嫌悪に陥り視線を落とすと、遥人が立ち上がった気配を感じた。
彼はテーブルを迂回して結衣のすぐ側までくると、片膝をついて視線の高さを合わせた。