求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
憂鬱な気分のまま、気が付けば自宅に着いていた。
遥人の自宅は閑静な住宅街に建つ、平屋建ての日本家屋。
充分な敷地面積がある為、実家だがプライベートが保たれている。
家族は皆忙しいので、顔を合わさない日の方が多い。
今日も真っ直ぐ自室に向かうつもりだったが、思いがけなく声をかけられた。
「遥人さん」
今聞くはずのない若い女性の声に、遥人は顔をしかめた。内心溜息を吐きながら声の方を振り向く。
北桜日奈子が、広い廊下の向こうから足早に近づいて来るところだった。
彼女の後ろには才賀家の住み込みの使用人の宝田がついている。
「お帰りなさい」
日奈子は遥人の前で立ち止まると、にこりと微笑んだ。
「こんな時間に何をしてるんだ?」
「遥人さんを待っていたの。今日は遅くなると聞いていたけれど、大事な話があって」