求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
遥人は宝田に物言いたげな視線を投げかけた。

不機嫌さが表れていたはずだが、五十代のベテラン使用人である彼は動じる様子を見せずに口を開いた。

「奥様の指示で、日奈子さまには客室を用意させて頂いております。北桜家にも連絡済みです」

宝田の報告に遥人は頷いた。

恐らく日奈子は大分前に来ていたのだろう。家族と夕食を取ったのかもしれない。

なんとか態度には出さないようにしたが、気分が重かった。

人の都合を考えずに押しかけて来る日奈子にも、泊まるように勧めた母にも不満が募る。

とは言え既に来てしまっているのを追い返す訳にもいかない。

「荷物を置いて来るから、待っていてくれるか?」

日奈子とはいつも応接間で話すことが多い。今もそのつもりだったが彼女は顔を曇らせた。

「遥人さんの部屋じゃ駄目なの? 前から部屋を見せてってお願いしているのに」

「……片付いてないから。いつもの部屋で待っていてくれ」

「そんなこと言って、一度も入れてくれないじゃない」

日奈子はふてくされたように頬を膨らます。大人びた美しい顔とその動作がかみ合わない。遥人は強い違和感を覚えた。
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