求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~

(俺は水島さんに惹かれはじめている)

ただとてもじゃないが、気持ちを伝えることは出来ない。

結衣にとっては今更だろうし、日奈子を傷つける結果になるのだから。

(以前の俺は何を考えていたんだろうな……水島さんに告白したのに、日奈子と旅行に行こうとしていたなんて)

そのくせ日奈子を部屋に招いたことがないと言う。

本当に大切にしたい相手ならば自分のテリトリーに入れたいと思うはずなのに。

気持ちは結衣にありながら、世間体を考え日奈子と結婚するつもりだったのだろうか。

最低だ。

本能的で打算的とも言える行動で自分のものと思えない。

納得はいかないが、とにかく二度と同じ過ちを犯さないようにしなくてはいけない。

今ならまだ思いとどまれるはずだ。この揺らぐ気持ちも、直ぐに落ち着くだろう。

遥人は脳裏に浮かぶ結衣の姿を消し、日奈子の待つ応接間に向かった。



応接間に入ると、日奈子は嬉しそうな笑みを浮かべた。

遥人に対する好意を、躊躇わずにストレートに表している。

そんな彼女の態度は、遥人が覚えている頃の日奈子とかなり印象が違う。

見合いの席でも、その後何度か会ったときも、遥人と日奈子の間には距離があった。

それなのに何がきっかけで日奈子はこのような笑顔を見せるようになったのだろう。

たった半年でここまで変わるものなのか。

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