求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
「遥人さん、お酒飲んで来たのでしょう? 大丈夫? 眠くない?」

「ああ、大して飲んでないから。それより話って?」

「あのね、そろそろ結婚式について相談したくて」

「結婚式?」

顔がひきつりそうになるのを抑えて、続きを促す。

「遥人さんの怪我も良くなってきたみたいだし、早く話を進めたいの」

遥人とは対照的に日奈子は楽しそうだ。

「……この前も話したけど、俺はまだ結婚を考えられない。今は仕事に完全に復帰することに集中したい」

「仕事はもう大丈夫でしょう? 会社に戻って一カ月くらい経つのだし」

「戻ったからって前みたいに仕事がこなせている訳じゃない。周りに迷惑をかけながら、最低限の内容をこなしているだけだ。新しいアイデアが浮かんでも提案出来る状態じゃないし……」

今の遥人の微妙な立場を伝えようとしたけれど、日奈子の戸惑った表情を見て口を閉ざした。

(言っても無駄だ)

「なんだかよく分からないけど、遥人さん大変なのね」

「ああ。だから結婚は……」

「あのね、前から考えていたんだけど、これからは本社の連城地所で働けばいいんじゃないかしら。どうせ元の仕事は覚えてないんだし、丁度いい機会でしょう?」

日奈子は素晴らしいアイデアだとでも言いたいのか、にこりと笑っている。
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