求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
胸中に苛立ちがこみ上げるのを抑え、遥人は首を横に振った。

「それはない。はっきり言っておくけど、この先も俺は連城設計から移るつもりはないんだ」

日奈子は遥人がグループ本社の連城地所で働くのを希望している。それは日奈子だけでなく北桜家の要望でもあるのだろう。

「そう……残念だけど遥人さんがそう言うのなら仕方ないわ。でも結婚については考えて欲しいの。せめていつ頃式をするのかはっきりしたくて。だって本当は事故の日に話すはずだったのだから」

遥人は事故当日の出来事も覚えていない。

だけど、残っていたメッセージから日奈子と会おうとしていたのは確かだ。
日奈子の言う通り、当時の遥人は結婚について前向きに考えていたのだろう。

だったら約束を守らなくてはいけない。忘れたのは遥人の都合なのだから。

日奈子に対して責任がある。

そう考え今日まで来たけれど……結婚の決断を迫られた今、限界を感じた。

(俺は間違っていた)

いくら努力しても日奈子を愛しいと思えない。心に響くような何かをひとつも見つけられなかった。

自分は愛していない女性と結婚なんて出来ないとつくづく思う。

そもそも罪悪感で付き合う自体が失礼で、傲慢な考えだったのだ。
心のない結婚しても日奈子が幸せになるわけがない。
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