Re:unknown
なんか言った?と蒼大に聞かれたけど
なんにもない、と笑って誤魔化す。
2人で話しながら歩いていると
いつの間にか私の家の前に着いていた。
『 今日もありがと、蒼大 』
玄関の前でお礼を言って振り向くと、
さっきまで私と冗談を言い合っていた蒼大が
何やらうつむいて地面を見つめている。
どうしたの?大丈夫!?と心配すると、
意を決したように口を開いた。
『 ……あのさ 』
『 具合悪い?早く帰って寝た方が…… 』
言いかけたところでムギュ、と
手で口を塞がれてしまう。
君がエナメルバッグから取り出したのは
ひとつのボールだった。
『……これ、やるよ』
『え……?』
おそるおそる受け取って見る。
それは昨日、蒼大のサヨナラで勝利を勝ち取った
記念のホームランボールだった。
『 準決勝 9回ウラ 石川蒼大君』
黒のマッキーで、そう書いてある。