未明の三日月 ~その後
詩帆が 3カ月を過ぎて、美咲は 産後初めて佳宏に抱かれた。
同じ部屋で眠る 詩帆が気になって、美咲は 愛に集中できない。
詩帆を産む前に 与えられた歓びを 美咲は 感じることができなかった。
「美咲、嫌なの?」
終わった後で、佳宏は 静かに聞く。
「嫌じゃないけど。詩帆ちゃんがいると思うと 気が散って。」
佳宏を 傷付けないように、美咲は 言葉を選ぶ。
佳宏は寂しそうに微笑んで、
「そっか。そうだよね。ごめん。」
と美咲に言った。
「私こそ、ごめん。」
美咲は言って、そっと目を閉じた。
それは、もう この話しを 終わりにしたいという 美咲の合図。
佳宏も 美咲に背を向けると、静かに寝息を立て始めた。