未明の三日月 ~その後
「斉藤さん。どう、仕事は慣れた?」
美咲の上司は、佳宏の同期だった。
「はい。色々、便宜を図っていただいて 助かります。」
定時より 一時間早く帰る美咲に、自分のペースでできる仕事を 与えてくれた。
「斉藤 子供 可愛がるでしょう。」
課長の言葉に、美咲は笑顔で、
「メロメロです。」
と答える。
「あいつ、変わったよね。自分から 子供の写真見せたり。ああいう奴じゃなかったよ。」
美咲は、課長の言葉を嬉しく聞く。
「そうですか?」
美咲はクスッと笑う。
「斉藤さんのことも 俺 すごく頼まれたよ。キツい仕事は させるなとか。」
冷かすように 美咲を見る課長に、
「愛されていますからねえ。」
と美咲は 笑顔で答えた。
「ちぇっ。俺も、そろそろ結婚するか。」
と言いながら、課長は立ち去る。
まだ独身の課長は 遊び人で有名だった。
そんな課長に 家族の自慢をしている佳宏。
温かい幸せが、美咲を微笑ませる。