未明の三日月 ~その後
「そうよね。簡単に 産んだ方がいいよ とか言えないよね。」
麻有子は 真面目な顔で答える。
「もし 二人目が生まれたら 私 仕事は続けられなくなるし。それに。」
と言って、美咲が言い淀むと、
「詩帆ちゃんの時みたいになるのが 怖いんでしょう、美咲。」
麻有子は いたずらっぽい目で 美咲を見る。
「まあね。仕事復帰して 生活のリズムもできて やっと家族3人の生活に 慣れたところだから。今の生活、変えるのが不安なの。」
美咲が言うと、
「案外 二人目って ついでみたいに育っちゃうよ。親に気負いがないから。大丈夫じゃないかな。」
と麻有子は言った。
「佳宏は もう一人 欲しいって言うの。子供は財産だからって。でもねえ。」
と言う美咲に、
「へえ。子供を 財産って言えるって 素敵なご主人だね。そう言えば私 壮馬が生まれた時、やっと家族になった気がしたわ。絵里加一人の時は 夫婦と子供 っていうイメージだったから。」
麻有子の言葉に、美咲はハッとする。
3人姉弟の美咲は 家族の中に 社会があったことを思い出す。
「何か 麻有子の話しって深いわ。私も もう一人 欲しい気がしてきた。」
美咲は、照れて言う。
「どんなに裕福でも 兄弟って お金で買ってあげられないものね。」
麻有子の言葉に 美咲の中で 何かが 吹っ切れた。
「仕方ない。成り行きに任せるか。あえて避妊しないで、妊娠したら産む。もし出来なくても、詩帆がいるし。」
晴々と言う美咲に、
「案外 来月あたり できたりしてね。ほら、美咲達もラブラブだから。」
と麻有子は笑った。