未明の三日月 ~その後
15
詩帆の 小学校入学式の前夜、美咲は
「あーあ。詩帆ちゃんに お受験させたかったなあ。」
と佳宏に言った。
「大丈夫。俺と美咲の子供だよ。頭良いから。」
と言って佳宏は 美咲に 笑顔を向ける。
「それもそうだね。」
美咲は 妙に納得してしまう。
「中学で 御三家くらい、楽々合格するよ。」
と、佳宏は言う。
「えー。東大 受かっちゃったりして。」
美咲も笑う。
「あり得る。でも それはちょっと嫌だね。」
と佳宏は苦笑した。
美咲が お受験を望んだのは、そこまでの 勉強をさせる為ではない。
付属校に入れて 受験の心配をしないで ゆっくり 学校生活を楽しませたかった。
でも それなりの小学校に 合格するためには みんな 小さな頃から 幼児教室に通っている。
美咲は 仕事を続けると決めた時 子供達の 小学校受験は諦めた。
中途半端な小学校なら、通わせる意味は ないと思ったから。