未明の三日月 ~その後
16

新しいマンションに移ってから 詩帆と幸輝は 子供部屋で眠るようになった。


子供達をお風呂に入れた佳宏が、二人に本を読んで 寝かし付けてくれる。
 

「ねえ佳宏。私 上野課長に “ あげまん ” って言われたよ。」


美咲が お風呂から出ると 佳宏は ソファで新聞を読んでいた。


そっと隣に腰掛けて 美咲は言う。
 


「何、それ。上野 やっぱり適当な奴だ。」

佳宏は 気持ち良さそうな笑顔で言う。
 

「佳宏 結婚するまでは 消極的で たた無難なだけだったって。でも最近 めきめきと能力が上がってきているって。」


佳宏と同期入社の 上野課長が 美咲の上司だった。
 

「それ、俺を褒めているの?美咲を褒めているの?」

佳宏の笑顔に、美咲も笑う。
 

「うーん。私じゃない。私のおかげで 佳宏の能力が 上がったって言いたいんだよ。」

美咲が答えると、
 

「元々の俺の能力でしょう。」

佳宏は苦笑する。美咲は小さく頷いて、
 


「まあ、そうかな。私、佳宏に 感謝しているからさ。」

と美咲は言う。
 


「やけに素直じゃない。何か おねだりじゃないの?」


佳宏は甘い目で、美咲を抱き寄せる。



美咲は 体が熱くなって そっと目を閉じてしまう。
 


「もしかして、そっちのおねだり?」



佳宏は熱く美咲の唇を塞ぐ。




まだ時間は早いけれど、二人は寝室の扉を閉めた。
 

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