さよなら虎馬、ハートブレイク
良かった。
泣きながら笑う私に、それでも心が見えないはずのあなたは全部受け止めたみたいに笑った。この人がいない世界を生きる。今は色濃くても、いつか褪せて見えなくなった時、もう一度何もなかったみたいにあなたの前で笑うため。
私と貴方は、この世で一番切ない4文字を告げるんだ。
「ばいばい、オズちゃん」
「さよなら、先輩」
背を向けたら、涙がこぼれた。足はすぐ振り向きたがった。恋しくても、愛しくても、それでも前に突き進まなくちゃならない。
これから歩く世界に、もう貴方がいなくても。
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見上げた曇り空の隙間から覗く青は、非情なほどに綺麗だった。雲間から射す光を茫然と仰ぎ見て、俯いた拍子にぽたり、と手の甲に落ちた雨。
またぽたり、と落ちたそれに、笑ったまま目を見張る。
「……..あれ」
あれ、と手で拭い、それでも溢れてくる涙にくっと奥歯を噛み締める。
「………なんで今更…っ」
何もかも全部遅いのに。
震える背中はとめどなく溢れる雨を前にして、一人静かに崩れ落ちた。