幸せと隣り合わせの君に蜜
3話 幸せの世界
 目の前にあるのは幸せな夫婦の笑顔。
羨ましい。私もこんな温かい雰囲気の家庭が……
そう思うたび、胸が縛り付けられるように痛い。
ウェディングプランナーの私が。
人の幸せの一歩を見守る私が。
人の家庭を壊している……

 仕事場で暗い顔はしたくない。
仕事仲間からは厚い信頼がある。
その状況を崩したくない。
だから私は前を向いたように笑顔を見せる。

 仕事終わりに私は後輩に声をかけられる。
「都築さんってまだ結婚してないですよね」
「うん。そうね。今は仕事が大事だから」
 とっさに嘘をつく私に驚く。
こんなにも私は汚れてきてしまっているんだ……
「今はって、都築さんもうすぐ30ですよね。だったら結婚相手探しましょうよ」
 後輩は何も知らない。
だからこそ、親身になって結婚のことを考えてくれている。
それにも申し訳ないと思う。
でも、私に恋なんて。相手なんて。できるはずない。
今の私にそんな資格はない。
「今から合コンなんですよ」
 後輩は周りに聞こえないように小さな声でささやく。
後輩はまだ24歳。きっと話題も世界も違うだろう。
「都築さんも行きましょ。女の子一人足りないんですよ」
 この私がその役を埋められるはずがない。
まず、女の子という年齢でもない。
断ろうと思っているともうすでに後輩は私の腕を掴んで離さない。
「わかった。行くだけね」
 渋々受け入れる私の頭の中は混乱状態だ。
この合コンでも何も変わらない。そう思っていた……
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