【完】淡い雪 キミと僕と
そう声を掛けると、みゃあみゃあと鳴いてソファーに座るわたしの周りをちょろちょろと動き回る。
その細く折れそうな体を抱き上げると、安心したように瞳を閉じる。素直に可愛いと思える。
わたしにも雪のような可愛げがあれば、人生は何か変わっていたのだろうか。歳を重ねる度に、可愛げがなくなっていく。
美しさには賞味期限がある。永遠に美貌を維持は出来ない。
必ず、老いは訪れる。その時に気づくのだ、自分が追い求めてきた見かけだけの美しさは何も意味を持たなかったことに。
こんな記事を読んだ事がある。
とある資産数十億の男に、20代の若く美しい女性が質問をした。
「自分は自他共に認める美しい女性だが、どうしたらお金持ちと結婚出来るか」と。
その回答が、あなたは美しさとお金を交換しようとしている。しかしお金を持つ男の資産は年々増えていく一方だが、女性の美しさは年々衰えるだけ。歳を重ねるごとに美しさ増える事はない。
そう考えた上で、あなたのトレードしたい物は年々価値が下がる一方な物であると。そんな女と、誰が結婚したいというのか。
清々しい程の正論だ。
わたしが少し前まで価値があると思い信じてやまなかった美貌や若さは、永久不滅の物ではない。それどころか、その価値は年々なくなっていく物だったのだ。
価値の下がらない物は、内面の美しさだ。内面の美しさだけは、努力し続ければ年々価値が上がっていくものなのではないだろうか。
しかし空っぽなわたしの内面など。どうやって磨いていったらいいのか分からないのだ。浅ましくまた妬ましく我儘で利己的な自分に残る物など、きっと何もない。