【完】淡い雪 キミと僕と
日曜日の夜。
昨日、西城さんは明日は1日出張があり帰りは夜中になるので来れない。と少し残念そうな顔をして言った。
寂しくなんかなかった。寧ろせいせいするくらいで、大体にして彼はわたしに会いに来る訳ではなかったのだ。あくまでも、雪に会いたいのだ。
猫が嫌いだなんて言いながらも、彼が雪に情が沸いてきているのは見え見えで、雪も雪で、ちっとも優しくなんか見えそうにないあの男によく懐いている。
無条件に自分に好意を寄せる生き物を、蔑ろにするほど冷たい人間ではない。
わたしだって、きっと西城さんだって。
ぽつりとひとり取り残されたような夜に、雪が居てくれて良かった。
もうわたしは、港区では遊ばない。
港区には絶対いないような人を好きになってしまったから。
自分が心から好きな相手でなければ、いくら高級レストランに行っても、高額なプレゼントを貰っても、ちっとも嬉しくないと知ってしまったから。
だからこそ、ぽっかりと空いてしまった何もない休日に、わたしを求めてくれる命がいてくれて良かった。
雪と一緒にいれば、ちっぽけな自分でも少しは存在する意義があるような気がするから。
ミルクを飲み、ひとしきり遊んだ後
満足気な表情を浮かべて、雪はわたしの隣でゆっくりと眠りについた。
テレビから流れる情報番組をボーっと眺めながら、井上さんの事を思い返していた。