【完】淡い雪 キミと僕と

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金曜日の夜から土曜日の夜は、びっちりと予定が詰まっていた。意図的にいれていたのかもしれない。

どこかで強がっていても、寂しがり屋の自分が居て、それが細い、いつかぷっつりと切れてしまってもおかしくはない繋がりであっても、誰かと一緒にいたかった。

誰かと繋がっていたかった。

ひとりぼっちの夜は、どこまでも暗く寂しいから、光りを求めいつでも彷徨っていた。

「ねぇ~、山岡さん、飲みに行こうよ~今日暇~?」

企画部の早瀬さんは井上さんの同期で、偉く仕事が出来ると評判の男だった。

異例の配属をされた彼は、野心家で自信家で内側からそれが見え隠れする様な、嫌なタイプの男だった。

自分が口説かれているのは知っていた。

受付でも千田ちゃんを無視して、わたしにばかり話を掛けてくる。

食事にも何度か誘われていたけど、それはさりげなくスルーし続けた。

だって全く持ってタイプではなかった。見た目も性格も。

「早瀬さん、ごめんなさい。今日は用事があって」

「ちぇ、山岡さんいっつもそれじゃん」

「本当に、ごめんなさい。また誘ってくれたら嬉しいです」

口にも思ってない事を平気で吐ける。しかし面倒くさい男なのだ。

ちっとも好きじゃないのに。

中肉中背で、これといった特徴もないけれど、ちゃらそうな雰囲気なのに、特別背の高くない所が嫌い。

眉毛が太いのが嫌い。唇が厚い所もいやらしそうで嫌。喋り方も嫌だ。唾が飛んできそうなくらい近づいてくるのも無理。距離感が近い所が1番嫌い。


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