【完】淡い雪 キミと僕と
「はぁ?!
ミルクは1日8回?!」
「あぁ、そうみたいだな。
俺は仕事が忙しくて、その猫の面倒を見る時間はなさそうだ」
時間はなさそうだって。それこそ無責任ではないか。
それに、それだけの理由でわたしに預けられても困る。相当困る。
わたしにだって生活ってもんがある。24時間張り付いてこの子を見てあげる訳にもいかないんだ。
「アンタねー…。
いるでしょ?他に世話してくれそうな女とか…」
「いや、女は信用ならない。
俺の気を引くために猫1匹殺しかねない」
「わたしだって女だけど?!」
「いや、アンタは…どっちかっていうと女寄りではないだろう」
「ざけんな、クソ坊ちゃんがよぉ?!
アンタの家で飼いなさい!」
「誰が坊ちゃんだ!この、クソ女がッ!
それにうちの実家は余りにも危険すぎる。こんな小汚い猫、母親が発狂するに違いない」
「知るかよッ。
じゃあアンタのご自慢のタワマンで優雅に暮らせばいいでしょう?!
猫ちゃんだって絶対こんな狭い家よりそっちの方が幸せだろ?!」
「俺は猫が嫌いなんだ」
じゃあそもそも何故その嫌いな猫を引き取ってくるというのだ。
動物愛護団体にでも預ければよかろう。
嫌いと言いながらも引き取ってくる矛盾。そして、女の所に預けていく身勝手さ。
そうなのだ。西城大輝という男はこういう奴なのだ。初めて会った時に優し気な笑みを浮かべて、耳に心地よい話ばかりをしてきたくせに、こいつの本当の本性は悪魔みたいな男なのだ。