【完】淡い雪 キミと僕と
お金持ちと結婚するのがゴールだと思っていた。
それがわたしの求めている最上級の幸福、だと。
豪華な生活。刺激的な日常。大きな家に住んで、優雅にガーデニングなんてして、お洒落なカフェでお茶をして、幸せな奥さんねぇと周りから羨まれる。
旦那の年収は絶対に1000万以上。そうでなければ、幸せになんかなれない。
幸せ=お金。だと本気で信じていた日があった。
お金と美しさを交換しようとしていた。
いずれは失って消えていくものだと分かりながらも。
そんな浅はかな女の手には、平凡な幸せすら掴めないだろう。
誰かを妬み僻み、意地悪な顔をして歳だけを重ねていく。そしていつか意地悪婆になって、誰からも見向きもされなくなる。
千田ちゃんは美しくはなかったけれど、綺麗だ。彼女の心の綺麗さは歳を重ねるごとに増していくだろう。
空っぽのまんま年齢だけ重ねる事が怖い。何も得る物もなく、ただ失うだけの日々は怖い。
翌日。
月曜日。アラームより早く起きてしまった。珍しい事もあるもんだ。
昨日あんなネガティブな事ばかり考えたせいであろう。
ベッドの上、段ボールの中で眠る雪は静かだった。静かに体を丸め、深い眠りについている、ようだった。
それを確認して、直ぐに洗面所に向かう。
洗面所のライトに照らされたわたしは余りにも酷い顔をしていた。
顔色もどす黒く、唇は白く、頬に色もない、ちっとも綺麗じゃない自分の顔が鏡に映っている。
勢いよく水を出して、がむしゃらに顔を洗った。すべて、すべて、流れて行ってしまえ――