【完】淡い雪 キミと僕と

カーテンの隙間から見えた空模様はどこかどんよりとくすんでいて、冴えない自分の顔色とよく似ていた。

テレビをつけたら天気予報のお姉さんが晴れ晴れしい笑顔で赤い傘を広げて、今日は昼から雨です。皆さんお出かけの際は傘を持っていきましょう!とはつらつとした声で伝えていた。

まだ、雨は降っていない。どこか静かな朝。

美容ドリンクを飲みながら携帯を開くと

『今から向かう』とたった一言だけのシンプルなメッセージ。

えらく早起きだ。

いつ寝ているのかと思うくらい、いつでも連絡の着くような男だった。

しかし今日は静かな朝だ。カーテンを開いても天気のせいなのだろうか、余り人足が多そうにはない。

ゆっくりと雪のミルクを用意して、ベッドの上に行く。

「雪?今日はお寝坊さんなのかな?
ミルクの時間だよ」

声を掛けても、雪が動く素振りはない。

まだ眠たいのだろうか、わたしが起きると無理やりにでも起きてこようとする子なのに。

「雪…?」

みゃあ、といつもよりか細い声がシンと静まり返った室内に響く。

段ボールに耳を近づけると、ゼイゼイと苦しそうに呼吸をする息づかいが僅かだが聴こえた。

雪は顔をこちらへ向けるだけで全く動こうとはしない。苦しそうに息を吐きながら、か細くみゃあみゃあ鳴いているだけだ。

「雪ってば?!」

手の中におさめられるほど小さい。それを小さなタオルケットで包み、わたしはたまらずに西城さんに電話していた。

「西城さん!!西城さん!!
雪が…
雪が―――」


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