【完】淡い雪 キミと僕と
「わたしだって…猫が大嫌いなのよッ」
「いや、だってそれはアンタがさ、うれしそーに一人暮らし始めました~!とか連絡してきて
しかも’ペット可’ってウキウキしていただろう?
だからこっちも親切心つーもんで、猫を連れてきてやったんじゃねぇか」
確かに、わたしはつい先日西城さんに連絡した。
1年の歳月を経て、わたしと彼はとある共通点によりたまに連絡を取ったりする間柄になっていた。
けれどそれは友人という類のものでは決してなく、かといって恋人というわけでも死んでもない。
何気ないやり取り。ブログでも書くように、近況報告を連絡した。
かといって、突然猫はないだろう。
大体猫なんて、人の傷を抉るような事。
猫は…猫だけは…。
あぁ嫌だ。思い出してしまう。一人暮らしを始めようとしたのだって、今までの自分を省みて新しい自分に生まれ変わるためだったのに、猫なんて…。
きっと今にも涙が零れ落ちそうな顔をしていたのかもしれない。
それを察してか、西城さんは「わーった、わかったよッ」とみすぼらしく汚れた小さな猫を抱き上げた。
さっきまで眠っていた子猫は目をぱっちりと開けて西城さんを見たかと思えば
彼のお腹の上でゴロンと丸まった。
そして彼の指先で楽しそうにじゃれつき遊んでいる。
「おお、遊んでるぞ?!」
いや、そりゃ猫だもの。遊びくらいするでしょうよ。
西城さんの指がこちょこちょと子猫の腹をくすぐるようにすると、子猫は嬉しそうに甘えて遊びだした。