【完】淡い雪 キミと僕と
だから、ここは有難く好意に甘んじておく。
この獣医たちは、俺たちから1円も受け取ってはくれやしないだろう。
必要とする日が来るのならば、この病院にいくらでも寄付をしよう。自分の出来る事を何でもしよう。もしもお金を受け取ってもらえないのなら、保護猫の貰い手を探す事くらいは、俺の手でも出来るような気がする。
ニコニコと微笑む小さな動物病院の獣医と奥さん。保護猫なんて面倒くさいもんを引き受けるお人好しなふたり。
けれど、この人たちは心から動物を愛し、そして心が豊かだ。
豊かさから、愛は育まれる。誰もが持っていたものだったのかもしれない。けれど、何故俺にはそれが欠落してしまっていたのだろう。
動物病院から帰る途中も、美麗は泣き続けた。
獣医は必死に雪の命を救おうとしてくれている。何が悲しいかさっぱりと分からん。むしろ困り切ってしまう。
「ねぇ、雪大丈夫だよね?」
「大丈夫だろ。俺たちは獣医じゃねぇから、出来る事はない。
それなら獣医に任せる方が雪にとってもいい…」
「そうだよね、うん、そうだ……
でもさぁ、養子って言ってたじゃない?!もしも雪が元気になっても返してくれなかったらどうしよう……」
何の、心配をしているというのだろうか、この馬鹿女は。
全くこれだから、困ったものだ。
「アンタなぁー…」
「だって、雪はあんなに可愛いものッ!きっとこれからもっと可愛くなっていくに違いないのッ
そうしたら返してくれなくなっちゃうかもしれない…嫌だよぉ…うぇ…うぇ…ヒック」