【完】淡い雪 キミと僕と
そして何故か、西城さんは2日に1回程家を訪ねて来るようにもなった。
雪のいない家。彼にとっては価値のない家だろう。それでも何度だって訪ねてきた。
何をするでも無い。偉そうにソファーを占領し、パソコンで仕事をしたり、食欲もないだろう、と言って、さまざまなデリバリーの食事を家まで運ぶ。
何気ない時間を過ごす。
それはとても優しく流れる時間でもあった。彼はたまに悪態をついて、わたしをからかい、それに本気で激怒するわたし。
黙り込んで空気のように側にいてくれる日もあって、たまにソファーで眠りに着く日もあった。そんな日は決まってブランケットを掛けてあげる。眠ってしまえば端正な顔立ちで、かっこいい部類に入る男なのだろう。
あの日彼はわたしに’アンタは優しい人間だ’と言った。
どっちが…。雪がいなくても家に尋ねてくるのは、わたしを心配してでしょう?ご飯を持ってくるのは、きちんと食べているか確認をする為でしょう?悪態をつくのは元気にさせるためで、空気のように側にいてくれるのは、わたしが雪を思い出し、自分を責めないようにするためだった。
そんな事、口に出さなくても伝わってくるのよ。あなたは、実はとても優しい人だから。
そして2週間後、何事もなかったかのように雪は退院した。
「みゃあー!」