【完】淡い雪 キミと僕と

「じゃあミルクの期間はお昼俺が面倒を見よう」

「仕事はどうすんの?」

「仕事なんて俺がいなくてもどうとでもなるだろう。
それに仕事は家でもパソコンを持ち込めば出来る」

「え?!それってアンタわたしの家に入り浸るって事?!
女子の家に?!」

「だからアンタは俺にとって女ではないから心配すんな」

その言葉にカチンときたけれど、会社を休むほど自由がきかない。
大手企業とはいえ、所詮雇われ。腰掛けOLなのだから。それは死活問題だ。


「じゃあ、合鍵を作っておくよ」

「だから勝手に!!!」

「酷い女だな。死にかけの猫がいるってのに」

西城さんのお腹の上に乗っている猫は
か細く「ミャー」と鳴き、こちらを上目遣いで見つめてきた。
なんと零れ落ちそうな程瞳の大きな猫だろう。
その瞳で凝視されると、まるで責められたような気分になるのだ。

「もぉ~ッ分かったわよ。でもある程度大きくなるまでだからね?!
わたしは猫が嫌いなんだから」

「ああ、気が合うな。俺も猫は嫌いだ」


だーかーら
じゃあ何で嫌いな猫を引き取ったりなんかすんのよ!

考えても考えても仕方がない。奴の頭の中なんか読めやしないんだから。
実際に目の前に猫はいて、山のような猫グッズまで買ってきてしまっている始末。

今にも死んでしまいそうな弱々しい子猫。それを今すぐ捨ててくるほど酷い人間にはなり切れない。かと言って手放しで可愛い可愛いと可愛がれる程心も広くはないけど。

それにしても、可愛くない猫だわ。見れば見るほど。
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