【完】淡い雪 キミと僕と

まだよたよたしていて小さかったが、見違えるほど元気になっており、部屋の中を走り回った。

200グラムとちょっとしかなかった体重が、400グラム近くになっていた。

顔もしっかりとしてきて、鼻についていた黒ずみもいつの間にか取れていた。もうネズミではない。毛もわずかながらふさふさと生えてきたし、ピンと伸ばす尻尾も心なしか長くなった気がした。

何より驚かせたのが、もうミルクではなく、ミルクにふやかしたドライフードも食べれるようになっていたのだ。器官がまだ弱く、たまにゲホッゲホッと咳をしていたが、それは気にしなくても大丈夫だと獣医は言った。

「実は、」と引き取る時に獣医と奥さんが言っていたのだが、連れてくるのが後1日遅かったら雪は死んでいたかもしれなかったらしい。相当危険な状態であったらしい。

それどころか病院に預けた時も、もしかしたらこの子は育たない子かもしれない、とも思ったらしい。けれども獣医さんの懸命の治療の末、雪は元気いっぱい生還してくれた。わたしの元へ戻ってきてくれた。

雪ちゃんの生きたいと思う気持ちが何よりも強かったと思います、とも。

動物病院の隣に隣接する獣医の自宅にいる、おばあちゃん猫に雪はとても懐いていて、おばあちゃん猫も雪をとても可愛がってくれていたという。

何度も何度もお礼を言った。伝えられる感謝なんて、言葉にしたら少なくて、それでも必死にお礼を言い続けた。


奥さんが、朝も夜もずっと面倒を見続けてくれたらしい。すっかり情はうつっていたらしく別れ際はとても寂しそうだった。

けれども猫にはワクチンもあるらしく、去勢手術もした方が良いという事で、誰に言われなくともこの病院をかかり付けにしようと決めていた。

こんなに動物を大切に思ってくれる病院は、この先見つかりそうもない。


< 130 / 614 >

この作品をシェア

pagetop