【完】淡い雪 キミと僕と

…何だっていうのよ…。


「んじゃ、俺は仕事が残ってるんで帰る事にする。
また明日朝に来る」

「だからー…どうしてそうなるって言うのよ」

「だから明日の朝に来て、鍵は合鍵を作っておくな」


基本的に人の話を聞かないこの男は、それだけ言い残すと子猫を指で優しく撫でて
そしてそそくさと家を出て行った。

だからそれが自分勝手だと言う事。

けれどもわたしのお腹の中で丸まって眠る子猫は、温かくて、まるで心底安心したように信頼をただただ純粋に向け続けるのだ。
動けなくなってしまったわたしは、ジーっとその猫を観察した。

白い、まるでネズミのような小ささ。小汚いが、成長していくにつれてとても綺麗な猫になっていくのだろうか。

そもそも本当に育つのだろうか。育児放棄をすれば、勝手に死んでくれる命に決まってる。
けれど預けられた以上、放っておく事も出来ないじゃないの。
しかし厄介な預かりものをしてしまった。


その日から、わたしの寝不足の毎日が始まってしまうのだ。

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