【完】淡い雪 キミと僕と
山岡 美麗。24歳。
今年25歳になる年。
職業は某大手お菓子メーカーの受付嬢。
小さい頃、夢は沢山あった。
たとえば、テレビの中に出てくるキラキラとしたアナウンサーとか
大手企業で一般職ではなく総合職で男と対等で働くキャリアウーマンだったり
芸能界に進出して、女優さんや歌手になったり
いくらお嬢様学校に出ていようが、成績が優秀だった事があったとて、上には上がいる。
頭の良さも、美しさも、わたしより優れている人が星の数ほどいると現実を知ったのはいつの頃からだっただろう。
自分の力で掴めないのならば、人に自分の夢は委ねれば良い。
そう思って港区へ繰り出して、毎夜のように男漁りしたって、どこかつまらなくて
そして、先日。失恋をしたばかり。この失恋は、男にほぼ振られた事のないわたしにとって相当痛手だった。
しかも振られた相手っていうのが所謂港区でキャリアを重ねているような優秀な地位も名声も持っているような男ではなかった。
どこにでもいる、平凡な、男。
わたしは生まれて初めて本気で男性を好きになり、そしてかなり痛い失恋をした。
ズルズルズルズル。いつまで経っても引きずっていた。自分の中に、ここまで未練がましい自分がいるとは。
そして新しい自分に生まれ変わるために初めての一人暮らしを始めた途端
世界で1番苦手な男から、こんな厄介な預かりものをする羽目になるなんて。
ツイてない。ツイてなさすぎる…。
けれども、お腹の上で幸せそうに寝息を立てるこの小さな子猫が
わたしの人生を変えていくなんて、この時は知る由も無かった。