【完】淡い雪 キミと僕と
雪は呑気に俺の腹の上で眠る。何故か苛々する。何を、俺の友達に媚びを売ってるというのだ?
「まぁ、アンタには縁のない世界って話だ。隼人程の男がアンタなんか相手にするかって。
それを社交辞令で綺麗だ美しい言われて舞い上がって、傍から見れば滑稽で笑いが止まらんぞ…?
もう少しアンタは身の丈つーもんを知った方がいい」
思ってもいない事が口からべらべらと出てくる。
一瞬ぎろりと睨まれたが、俺を無視して隼人と話を続ける。…ほんと、苛々する女だな。
「まぁ彼はああは言ってますけどね。美麗さんは僕のタイプなんですよ。
良かったら、今度お食事でもどうですか?」
「え~…え~…」
美麗の視線がちらちらとこちらを刺す。
助けを求めているのだろうか。こんな事は言うつもりはなかった。
ただ何故か無性に腹が立って、思ってもいなかった事が口を滑り落ちるように出て来てしまっただけなんだ。
本音などではなかった。そんな事、今となっちゃ思いもしなかった。
俺は美麗と過ごす時間で彼女の良い所も沢山知っていたし、優しい人間だというのも分かり切っていた。
過去に港区で遊んでいたとしても、今は違う。港区に数いる、馬鹿女のひとりではない。…そう頭では理解っていたはずなのに。どうして口からは正反対の言葉ばかり出て来てしまうのだろうか。
「隼人、止めておけ。
そいつは港区で遊んでいる尻軽の馬鹿女だ。
お金を持っている男ならば誰でも良い。騙されて貢がされるだけだ」
おいおい、俺は何を言っているのだ?!こいつはそこまで馬鹿でも尻軽女でもないだろう。
勝手に口が動いていくだけなんだ!これは誤解なんだ!
心とが裏腹に、口から出る言葉は止まらない。
「この程度の女など、その辺にゴロゴロと転がっている。隼人、考え直した方がいい」